2026/07/04

「暑くて仕事になりません!」は正当な理由?オフィスの室温が下がらない時の労働者の権利

連日30度を超える猛暑が続く夏。オフィスのエアコン設定を巡って、「暑くて集中できない」という人と「冷えすぎて寒い」という人の間で、静かな戦争が勃発していませんか?

あまりの暑さに「これじゃ仕事にならない!」とデスクで頭を抱えている方も多いはず。実は、この「オフィスの暑さ」には明確な法的ルールが存在します。

今回は、人事・労務の観点から「オフィスの環境」に関する法律の事実と、どうしてもオフィスが暑くて体内に熱がこもる時の具体的な対策・ポイントを一覧で解説します。

事実:法律が定めるオフィスの室温は「17度以上28度以下」

まず結論から言うと、会社は「オフィスを適切な温度に保つ義務」を法律で課されています。

根拠となるのは、労働安全衛生法に基づく「事務所衛生基準規則(第5条)」という法律です。ここには、事業者が空気調和設備(エアコンなど)を設けている場合、室内の気温や湿度を以下のように調節しなければならないと定められています。

【事務所衛生基準規則 第5条】 事業者は、空気調和設備を設けている場合は、室の気温が17度以上28度以下、及び相対湿度が40%以上70%以下になるように努めなければならない。 (※令和4年4月の法改正により、それまでの「18度以上」から緩和・変更されました)

つまり、もしオフィスの室温が「29度」や「30度」になっており、それが放置されている状態なら、会社は法律(努力義務)を果たしていないことになります。

「エアコンの設定」ではなく「実際の室温」が目安

ここで重要なのは、エアコンのリモコンが「25度」に設定されていても、実際の室温(デスク周辺の温度)が28度を超えていればアウトだということです。基準になるのは、あくまで「労働者が働いている場所の実測値」です。

法律:会社には「安全配慮義務」がある

「努力義務なら、守らなくても罰則はないんでしょ?」と思うかもしれません。しかし、会社にはもう一つ、労働契約法第5条に定められた「安全配慮義務」があります。

人間は、室温が高い空間に長時間いると、体温を調節するために大量の汗をかきます。その結果、体内の水分や塩分が失われ、熱中症を引き起こす危険性が非常に高くなります。

もし、オフィスが過酷な暑さであるにもかかわらず、会社が「電気代の節約」などを理由に対策を怠り、従業員が熱中症で倒れてしまった場合、会社は安全配慮義務違反に問われる可能性があります。

したがって、「暑くて仕事になりません」という訴えは、労働者としての正当な権利の主張であり、会社は真摯に対応する義務があります。

なぜ起きる?オフィスが冷えない「3つの原因」

法律で決まっているとはいえ、現実には「エアコンをフル稼働させているのに暑い」というケースもあります。主な原因は以下の3つです。

  • 「環境省の28度推奨」の誤解 環境省が推奨する「クールビズの28度」は、エアコンの設定温度ではなく「室温を28度にする」という意味です。これを誤解して一律で設定温度を28度に固定しているため、室内が冷え切らないケースが多発しています。
  • OA機器の熱とオフィスの構造 パソコンやサーバーは想像以上の熱を発します。また、窓が大きくて遮光カーテンがないオフィスでは、外気熱によってエアコンの能力が追いつかなくなります。
  • エアコンのメンテナンス不足 フィルターが埃で目詰まりしていると、いくら設定温度を下げても冷たい空気が出ず、電気代だけが高くなるという悪循環に陥ります。

人事が教える!オフィスが暑いときの上手な対処法

「暑い」とただ不満を言うだけでは、社内のエアコン戦争(冷え性派との対立)が悪化するだけです。建設的に環境を変えるためのステップをご紹介します。

  • ステップ①:まずは「温度計」で証拠を残す 感覚で「暑い」と言うのではなく、自分のデスクに温度計を置き、「14時の時点で室温が29.5度あります」と具体的な数字で総務や人事に報告しましょう。数字で示されると、管理部門も動かざるを得なくなります。
  • ステップ②:空気を循環させるアイテムを利用する エアコンの風が届かない「死角」がある場合は、効果的な空気循環を促すサーキュレーターの設置を提案しましょう。また、「暑がりな人は風が当たる席へ、冷え性な人は当たらない席へ」といった席替えのルール作りを相談するのも有効です。
  • ステップ③:こまめな水分・塩分補給で自衛する 外回りなどの運動の後や、どうしても室温が下がらない時は、体内の脱水を防ぐために「水だけでなく塩分も一緒に補給」することを徹底してください。マイボトルにスポーツドリンクを入れておくのがおすすめです。

まとめ:快適なオフィス環境は、生産性を上げるための投資

米国の研究データなどでも、「オフィスの室温が上がると、作業能率(生産性)が著しく低下する」ことが証明されています。暑さを我慢してダラダラ働くよりも、適切な室温で集中して定時に帰るほうが、会社にとっても従業員にとってもプラスです。

もし「うちのオフィス、暑すぎるかも…」と思ったら、体調を崩す前に、まずはデスクの温度を測ることから始めてみませんか?

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